医療機関の人事手続(入退社の手続き)

医療機関の人事手続(入退社の手続き)

医療機関を運営するうえで避けられない仕事が「人事手続」です。

従業員が入社または退社するときには、社会保険や税金の面で様々な人事手続きが発生します。

ということで、今回は医療機関における従業員入退社時の手続きについてご紹介します。

最も質問が多い人事関係

入退社時の手続きには、
①健康保険及び厚生年金保険、②雇用保険
③住民税、④所得税があります。

入社時の手続き

新たに従業員が入社した時は、事業所は以下のような手続きを行わなければなりません。

  • (1)年金事務所へ健康保険・厚生年金保険の加入手続きを行う
  • (2)ハローワークで雇用保険の加入手続きを行う
  • (3)従業員に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう
  • (4)市町村で住民税特別徴収の手続きを行う

(1)年金事務所へ健康保険・厚生年金保険の加入手続きを行う

年金事務所で行う手続きでは、以下の書類を提出します。

 【提出書類】 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

        健康保険被扶養者(異動)届 ※1

        国民年金第3号被保険者関係届 ※2

 【提出期限】 入社日から5日以内

 【持参書類】 原則必要なし

  ※1 従業員が親族を健康保険の扶養とする場合

  ※2 従業員が配偶者を健康保険の扶養とする場合(健康保険被扶養者異動届に合わせて提出)

この手続きにより決定された標準報酬月額に基づいて、給与からの社会保険料控除を行いましょう。

ただし、65歳以上の従業員は介護保険について、事業所ではなく、従業員自身で市町村窓口で手続きをする必要があります。

75歳以上の従業員は、後期高齢者医療制度の対象になるため、事業所において健康保険に加入することはできません。

また、年金事務所から交付される書類は以下のように取り扱います。

 【事業所保管分】 標準報酬月額決定通知書

 【従業員へ交付】 健康保険被保険者証

●()ハローワークで雇用保険の加入手続きを行う

ハローワークで行う手続きでは、以下の書類を提出します。

 【提出書類】 雇用保険被保険者資格取得届

 【提出期限】 被保険者となった月の翌月10日まで

 【持参書類】 入社した者の雇用保険被保険者証 ※3

        賃金台帳

        労働者名簿

        出勤簿またはタイムカード

        他の社会保険の資格取得関係書類

        雇用期間を確認できる資料(雇用契約書等)

  ※3 入社した従業員が前職で雇用保険に加入しており、雇用保険被保険者証を紛失している場      合は、前職の情報が分かるもの(履歴書など)を持参しましょう。

手続き終了後に、ハローワークから交付される書類は、以下のように取り扱います。

 【事業所保管分】 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)

 【従業員へ交付】 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)

          雇用保険被保険者証

雇用保険と異なり、労災保険については、原則すべての労働者が対象になるため個別の手続きは発生しません。

事業所として加入をし、労災保険料を支払っているため、入社時の手続きは不要です。

●()従業員に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう

所得税の計算をするときに必要な「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を最初の給与支給日までに提出してもらいます。

これにより、扶養親族等の人数が確定されて、毎月給与から控除する所得税が決定します。

●()市町村で住民税特別徴収の手続きを行う

住民税については、入社する従業員が納付をしていない住民税があるかを確認しましょう。

前職を退職するときに、退職日が毎年1月から5月の間であれば、前の職場が残りの住民税をまとめて徴収、納付をしています。

そうでない場合は、従業員の希望により特別徴収を引き継ぐことができます。

その場合の手続きは以下のとおりです。

 【提出先】  入社する従業員の住所がある市町村(市役所、役場)

 【提出書類】 給与支払報告書・特別徴収にかかる給与所得者異動届出書 ※4

        普通徴収から特別徴収への切替届出書 ※5

 【提出期限】 特になし

 【持参書類】 原則必要なし

  ※4 前の職場から給与支払報告書・特別徴収にかかる給与所得者異動届出書提出がある場合は、     当該書類を提出。

  ※5 前の職場から給与支払報告書・特別徴収にかかる給与所得者異動届出書提出がない場合は、     当該書類を提出。

退社時の手続き

従業員が退社した時は、事業所は以下のような手続きを行わなければなりません。

  • (1)年金事務所で健康保険・厚生年金保険の喪失手続きを行う
  • (2)ハローワークで雇用保険の喪失手続きを行う
  • (3)退職する従業員に「給与所得の源泉徴収票」を発行する
  • (4)住民税の手続きを行う

●()年金事務所で健康保険・厚生年金保険の喪失手続きを行う

年金事務所で行う手続きでは、以下の書類を提出します。

 【提出書類】 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届

        健康保険被扶養者(異動)届 ※6

 【提出期限】 退社日から5日以内

 【持参書類】 健康保険被保険者証(従業員が使用している健康保険証のこと)

  ※6 退社する従業員の親族が扶養になっている場合

手続き終了後に年金事務所から交付される書類は、以下のように取り扱います。

 【事業所で保管】 健康保険・厚生年金保険資格喪失等確認請求書

●()ハローワークで雇用保険の喪失手続きを行う

ハローワークで行う手続きでは、以下の書類を提出します。

 【提出書類】 雇用保険被保険者資格喪失届

        雇用保険被保険者離職証明書 ※7

 【提出期限】 被保険者ではなくなった月の翌月10日まで

 【持参書類】 賃金の支払状況や資格喪失の事実、資格喪失日及び資格喪失の状況が確認できる書類

        賃金台帳

        労働者名簿

        出勤簿またはタイムカード

        退職願など(自己都合退職の場合)

        解雇予告通知書、就業規則など(会社都合退職の場合)

  ※7 失業手当を受けるときに必要な書類です。従業員からの希望があれば準備をしましょう。

手続き終了後に、ハローワークから交付される書類は以下のように取り扱います。

 【事業所保管分】 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)

          雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)

 【従業員へ交付】 雇用保険被保険者離職票

労災保険については、入社時と同様、個別の手続きは発生しません。

●()退職する従業員に「給与所得の源泉徴収票」を発行する

退職をする従業員には、今まで勤務した分の給与に対する源泉徴収票を交付します。

退職者は、この書類を使用し次の職場で年末調整を行うまたは自身で確定申告を行うこととなります。

●()住民税の手続きを行う

退職者の住民税は、退職する時期によって取り扱いが異なります。

退職日が6月から12月

  • 従業員が、残りの住民税を一括徴収とするか、従業員自身で納付をするか決めることができる。

退職日が1月から5月

  • 会社が残りの住民税(退職月から5月までの分)を一括で徴収して納付する。

退職者と相談した結果、一括徴収をする場合または従業員自身で納付する場合どちらになっても、以下のような手続きを行います。

 【提出先】  退社する従業員の住所がある市町村(市役所、役場)

 【提出書類】 給与支払報告書・特別徴収にかかる給与所得者異動届出書

 【提出期限】 特になし

 【持参書類】 原則必要なし

まとめ

最後に、入退社時の手続きをまとめておきます。

()従業員入社時の手続き

  • 年金事務所へ健康保険・厚生年金保険の加入手続きを行う
  • ハローワークで雇用保険の加入手続きを行う
  • 従業員に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう
  • 市町村で住民税特別徴収の手続きを行う

()従業員退社時は手続き

  • 年金事務所で健康保険・厚生年金保険の喪失手続きを行う
  • ハローワークで雇用保険の喪失手続きを行う
  • 退職する従業員に「給与所得の源泉徴収票」を発行する
  • 市町村へ住民税の手続きを行う

いかがでしたでしょうか。

従業員の入退社時には様々な手続きが発生しますので、このページで一度整理してみてください。

皆さまの医院経営にこのコラムをぜひ役立ててくださいね。

 

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