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医療機関を運営するうえで避けられない仕事が人事手続です。
その中でも、健康保険と厚生年金保険の手続きは重要で、1年に1度必ず手続きを行う「定時改定」と、一定の要件に該当した場合に手続きを行う「随時改定」があります。
今回は、そんな事業所で行う健康保険と厚生年金保険(以下「社会保険」といいます。)の手続きをご紹介します。
最も質問が多い人事関係
健康保険と厚生年金保険の手続き
①1年に1度行う「定時改定」
②賃金変更時に行う「随時改定」
社会保険の定時改定とは、1年間の健康保険料と厚生年金保険料を決めるために行う手続きです。
健康保険料と厚生年金保険料は、「標準報酬月額」といわれる数値によって決定されます。
実際に支払っている賃金から、標準報酬月額を毎年1度計算して、社会保険料の決定がされるのです。
具体的な手続きは、以下のとおりです。
この手続きには「算定基礎届」というものを使用します。
算定基礎届は毎年6月上旬から下旬に事業所へ送られてきます。
送られてきた算定基礎届に、7月1日時点で社会保険に加入しているすべての従業員の3ヵ月分の賃金月額を記載して、提出をします。
そして、3ヵ月分の賃金とは毎年4月、5月、6月に支払われたものです。
ただし、下記に該当する従業員はこの手続きの対象外となります。
このような場合は、直近もしくはこの後すぐに社会保険料を決定する手続きを行うため、対象から外されているのです。
算定基礎届を送付すると、日本年金機構から標準報酬月額決定通知書が送付されてきますので、その書類に基づいて従業員の保険料を変更します。
そして、決定がされた社会保険料は、毎年9月から翌年の8月まで適用し続けます。
ではもし、4月から6月までの間だけ賃金が高くなってしまう場合はどうすればよいのでしょうか。
例えば、4月から6月まで繁忙期で、この間だけ賃金がグーンと高くなってしまった場合です。
そういった場合でも、原則としては、4月、5月、6月の賃金により算定および決定をします。
しかし、届出を提出することで「年間平均」の賃金により算定基礎届を提出することもできます。
以下のリンクを参考にしてみてください。
【リンク:定時決定のため、4月~6月の報酬月額の届出を行う際、年間報酬の平均で算定するとき(日本年金機構)】
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kenpo-todoke/hoshu/20141002.html
上で紹介している定時決定以外に、「社会保険の随時決定」という手続きがあります。
随時決定とは、年の途中で、支給される賃金が大幅に変更された場合に行う手続きです。
例えば、賃金20万円だった従業員が昇給のため30万円になったとすると、
実際にもらっている賃金は30万円なのに、社会保険料の支払いは次の定時改定まで20万円のままとなってしまいます。
このようなギャップをなくすために、随時改定の仕組みがとられているのです。
具体的には、以下の3要件すべてに該当した時は、随時改定を行わなければなりません。
ここでの、「支払基礎日数」とは、月給制の場合、給料計算の対象となる日数をいい、日給制の場合は、出勤日数が支払基礎日数になります。
次に、社会保険随時改定の具体的な実務は以下のとおりです。
この手続きで使用する「月額変更届」は、下記に記載している日本年金機構のホームページから取得することができます。
随時改定のスケジュールは、賃金が変わって3ヵ月経過後に月額変更届を提出します。
すると、定時改定を行ったとき同様、標準報酬月額決定通知書が事業所に届きますので、それに従って保険料を変更します。
具体的な変更のスケジュールは、昇給又は降給により賃金が変わってから、3ヵ月間は今までの保険料で徴収。
賃金を変更して4か月目の社会保険料から変更されます。
さらに、社会保険料は当月分の保険料が、翌月の給与支払いから控除されるため、実際に控除額が変わるのは報酬を変更して5ヶ月目からになります。
【リンク:月額変更届の提出(日本年金機構)】
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20141104-02.html
最後に、算定基礎届と月額変更届を作成するうえでのポイントをご紹介します。
【1】定時改定の算定基礎届を作成する上でのポイント
●(1)について
社会保険の算定基礎届を作成するときには、賃金の計算対象に含めるものと含めないものをおさえておきましょう。
賃金となるものには、基本給や残業手当、通勤手当など一般的に支給されるものはほとんどが対象とされています。
ここでは、計算に含めないものをおさえておきましょう。
【計算に含まれないもの】
●(2)について
算定基礎届に記載すべき月を確認しましょう。
算定基礎届に記載をする月は17日以上の支払基礎日数が必要です。
よって、支払基礎日数が17日未満の月は、報酬が通常月とかけ離れる可能性があるため、計算の対象外とされています。
例えば、新たな従業員が入社した場合で、入社月の支払基礎日数が17日未満のとき、その月は算定基礎届の対象となりません。
その場合は入社月を除いた1ヶ月分または2ヶ月分の給与を用いて、算定基礎届を作成します。
しかし、パートやアルバイトなどの短時間労働者では、一部取り扱いが異なっていて、
短時間労働者の算定基礎届で、4月、5月、6月の3か月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合には、支払基礎日数が15日以上で算定基礎届の対象にすることができます。
【2】随時決定の月額変更届を作成する上でのポイント
●(1)について
随時改定の月額変更届においても、支払う賃金を計算対象に含めるものと含めないものに分ける必要があります。
しかし、これは算定基礎届の取り扱いと同じですので、上に書いてある内容を参考としてください。
●(2)について
月額変更届をどういった場合に提出しなければならないのかをおさえておきましょう。
月額変更届を提出するケースでは、以下の3要件すべてを満たさなければなりません。
誤りやすい内容として、少し昇給をしただけで月額変更届を出してしまうケースがあります。
月額変更届を提出するのは、報酬を変更したときの標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額に2等級以上の差が出た場合です。
よって、5,000円くらいの昇給では、2等級の上昇にはあたらないので、月額変更届を提出する必要はありません。
賃金の上昇額または減少額が、今の標準報酬月額と比べて2等級以上の差になっているかを確認しましょう。
いかがでしたでしょうか。
社会保険は、毎年または変更の必要があるときは届出を提出しなければなりません。
このページで一度整理してみてください。
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