医療機関の給与計算(総支給額からの控除②)

医療機関の給与計算(総支給額からの控除②)

医療機関を運営するうえで避けられない仕事が『給与計算』です。

給与計算の仕組みは、複雑でミスをすると従業員の不信感につながってしまいます。

給与計算をする際は、最低限の知識を持っておくことが必要です。

そこで、今回から医療機関の給与計算を、複数回に分けて解説していきます。

第6回目では、以下の法定控除のうち、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料をご紹介しました。

  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 所得税
  • 住民税

第7回目は、第6回目で紹介した控除項目の続きである、雇用保険料、所得税、住民税をご紹介いたします。

毎月の一大イベント 給与計算

給与から控除する項目をおさえておきましょう!

雇用保険料

雇用保険とは、従業員さんが失業した時や育児、介護などで勤務を継続することが困難になった場合に給付金を支給する保険のことです。

雇用保険に加入している従業員は、給与から雇用保険料が控除され事業所を通じて納付を行います。

雇用保険料の計算は、シンプルで給与の総支給額に従業員負担分の保険料を掛けて算出します。

保険料については、従業員と事業所がそれぞれ負担しますが、健康保険料等とは異なり事業所の保険料負担割合が大きくなっています。

クリニックであれば、3/1000が従業員負担、6/1000が事業所負担となっています。

つまり、給与から控除する金額は、総支給額に3/1000を掛けて算出した金額です。

  雇用保険料率
従業員負担 3/1000
事業主負担 6/1000

合計保険料

(従業員負担+事業主負担)

9/1000

所得税

所得税とは、従業員の収入に応じて控除がされる税金のことです。

所得税の控除を行う際は、「給与所得の源泉徴収税額表」と「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を準備し、以下の手順で行います。

  • (1)給与の総支給額から通勤手当を差し引く
  • (2)差し引いた金額から健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料を控除する
  • (3)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書で扶養親族等の数を確認
  • (4)給与所得の源泉徴収税額表に当てはめて、所得税の金額を確定する
  • (5)給与から控除した所得税を翌月の10日までに納付する

(1)について

まず、総支給額から通勤手当を差し引きます。

通勤手当は所得税法上、非課税給与とされていて、所得税が課税されないためです。

(2)について

次に、社会保険料をすべて控除します。

社会保険料は、年末調整時に社会保険料控除として控除対象となります。

よって、社会保険料はいずれ年末調整で控除するものであるため、前もって毎月の所得税計算でも控除することとされています。

(3)について

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書で扶養親族の数を確認します。

扶養親族とは、所得税法上一定の所得金額を受けることができる家族のこと。

例えば、よくいわれる「専業主婦や学生の家族がいると税金が安くなる」というのは、そういった方が扶養親族に該当するからです。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には、従業員に記載してもらった扶養親族等の名前が書いてありますので、その扶養親族等の人数を確認しましょう。

(4)について

「給与所得の源泉徴収税額表」にこれまで確認したことを当てはめていきます。

給与所得の源泉徴収税額表の縦軸は、その月の社会保険料等控除後の給与等の金額ですので、上記(2)で算出した金額を当てはめましょう。

一方、横軸は扶養親族等の数を表しています。

上記()で確認した扶養親族等の数を当てはめましょう。

それぞれの数字を当てはめた縦軸と横軸がぶつかる部分が、控除をするべき所得税の金額です。

例えば、「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」が180,000円で、扶養親族等の数が1人の従業員の所得税の金額は、2,430円となります。

(5)について

最後に、給与から控除をした所得税は、翌月10日までに納付を行う必要があります。

納付は、税務署から送付されてくる「所得税徴収高計算書」を使用して、金融機関で行いましょう。

控除された所得税は、この後どうなるのでしょうか。

納付をした所得税は、毎年12月の年末調整によって、正確な所得税額に計算がしなおされます

そこで、所得税が控除されすぎていれば、事業主から従業員へ還付。

逆に控除額が足りなければ、事業主は、従業員から差額を徴収します。

よって、毎月控除がされる所得税はあくまで概算の控除額なのです。

住民税

住民税とは、その年1月1日時点の住所がある都道府県、市町村に支払う税金のことです。

この中には、都道府県民税と市町村民税が含まれていて、この2つは合わせて「住民税」と呼ばれます。

住民税は、毎年5月くらいに市町村から送付されてくる「特別徴収税額通知書」に基づいて、給与から控除を行います。

この住民税の控除方法には、以下の2種類があります。

  • 特別徴収
  • 普通徴収

特別徴収とは事業所が従業員の給与から控除をして納付を行う方法です。

普通徴収とは従業員自身が住民税を納付する方法で、事業所は特に何も行う必要はありません。

以前は事業所にとって手間がかからない普通徴収を行っている事業所が多くありました。

しかし、現在では、各市町村が特別徴収を推進しており、特別徴収が困難である理由がない限りは、原則として特別徴収を行うこととされています。

納付については、所得税同様、給与から控除した住民税は翌月10日までに行わなければなりません。

市町村から送付されてくる納付書を使用して金融機関で納付をしましょう。

【参考】
医療機関の人事手続についてはこちら
(労災保険と雇用保険をさらに詳しく)

いかがでしたでしょうか。

総支給額の金額から控除項目を差し引くことで、最終的な手取金額が算出できます。

皆さまの医院経営にこのコラムをぜひ役立ててください。

 

このページを読んだ人はこんなページも見ています

こちらのページを読んだ方には、下記のページもよく読まれています。ぜひご一読ください。

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せはこちら

092-471-4710
受付時間
9:00~18:00
定休日
土・日・祝日