医療機関の給与計算(割増賃金の計算)

医療機関の給与計算(割増賃金の計算)

医療機関の運営をするうえで避けられない仕事が『給与計算』です。

給与計算の仕組みは、複雑でミスをすると従業員の不信感につながってしまいます。

給与計算をする際は、最低限の知識を持っておくことが必要です。

そこで、今回から医療機関の給与計算を、複数回に分けて解説していきます。

第4回目は、第2回目で紹介した割増賃金について詳しくご紹介いたします。

毎月の一大イベント 給与計算

①どういったときに割増賃金が発生するか
②どのくらいの割合を上乗せしなければならないか
をおさえておきましょう!

時間外労働の割増

定時の退社時間よりも遅く残って仕事をすると、残業であるということはよく知られています。

そして、残業とした時間は、少し多めに残業代がつく。

この仕組みを労働基準法に基づいて、解説したいと思います。

労働基準法37条では、時間外労働について

「法定労働時間を超えて勤務した場合、通常支払われる賃金に二割五分以上五割以下の割増賃金を上乗せしなくてはいけない」

と定めています。

よって、時間外労働をした従業員には、通常支払われる賃金2割5分以上を上乗せして支払わなければなりません。

一般的に、この割増賃金のことを残業代と呼んでいます。

次に、条文の中にある「法定労働時間」とは労働基準法に定められていて、1週間について40時間以内1日について8時間以内とされています。

つまり、この労働時間を超えた部分に対して割増賃金が発生します。

例えば、会社の所定労働時間が午前9時から17時(休憩1時間)までの7時間である場合。

従業員さんが18時まで残って仕事をしたとしても、1日の労働時間は8時間ですので、割増賃金は発生しません。

この場合は、通常の1時間当たりの時間単価で計算した賃金を支給します。

割増賃金を考えるときはあくまで、

  • (1)1日あたり「8時間超」働いたのか
  • (2)1週間あたり「40時間超」働いたのか

という基準で見ていきます。

休日出勤時の割増

従業員さんが休日出勤をした場合、多めの給与を支払わなければならないのでしょうか。

法律では、法定休日に労働をさせた場合通常支払われる賃金に3割5分以上5割以下の割増賃金を上乗せしなくてはならないとされています。

この「法定休日」とは、労働基準法35条に

「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」

と定められています。

つまり、法律上は1週間で与えるべき休日を1日としているため、一週間に6日勤務した場合でも休日出勤とはなりません。

1週間に休日を1日も与えなかった場合には、3割5分以上の割増賃金が発生します。

しかし、週6日勤務して1週間の労働時間が40時間超となった場合は、

時間外労働に対する割増賃金(2割5分以上)が必要ですので、忘れないようにしておきましょう。

深夜労働時の割増

毎月のレセプト算定など、従業員さんに深夜まで勤務してもらったときにも割増賃金が発生します。

労働基準法37条には、

「使用者が、午後十時から午前五時までの間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」

と定められています。

つまり、深夜時間に勤務をした従業員には、通常支払われる賃金に2割5分の上乗せをします

深夜とは、午後10時から午前5時までを時間のことで、有床診療所などで夜勤を行っている看護師さんなどにも、この割増賃金が適用されます。

さらに、時間外労働かつ深夜労働となった場合などには、それぞれの割増率を加算します。

例えば、午前9時から仕事を始めて午後11時に仕事が終わった場合。

休憩を2時間だとすると午前9時から午後11時までで、12時間勤務をしています。

このうち、労働時間8時間を超える部分4時間が「時間外労働による割増」、

さらに午後10時から11時までの1時間が「深夜労働による割増」となります。

このとき午後10時から11時までの1時間は「時間外労働による割増かつ深夜労働による割増

が重なっているため、それぞれの割増率をプラスして計算を行うのです。

つまり、計算式は「25%+25%=50%」で50%の割増率になります。

それぞれの割増率をまとめた表は下記のとおりです。参考としてみてください。

  割増率
時間外労働をさせた場合 25%以上
深夜労働をさせた場合 25%以上
休日労働をさせた場合 35%以上

時間外労働を深夜までさせた場合(25%+25%)【加算】

50%以上
休日労働を深夜までさせた場合(35%+25%)【加算】 60%以上

いかがでしたでしょうか。

今回は第2回目で紹介した総支給額の計算で重要な「割増賃金」についてご紹介しました。

総支給額の計算をするうえで、今回紹介したことを知っておけばより給与計算を理解できるはずです。

皆さまの医院経営にこのコラムをぜひ役立ててください。

 

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