福岡市の税理士(医療税務・開業支援)
グラント税理士事務所
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医療機関を運営するうえで避けられない仕事が『給与計算』です。
給与計算の仕組みは、複雑でミスをすると従業員の不信感につながってしまいます。
給与計算をする際は、最低限の知識を持っておくことが必要です。
そこで、今回から医療機関の給与計算を、複数回に分けて解説していきます。
第3回目は、第2回目で紹介した総支給額の計算について補足事項をご紹介いたします。
毎月の一大イベント 給与計算
総支給額算出時のイレギュラーな計算をおさえましょう!
給与計算を行う際に関係する労働基準法についてご紹介をさせていただきます。
労働基準法では、賃金を支払うときの基礎となる原則を5つ定めています。
ここでいう「賃金払い」の賃金とは、労働基準法で
『賃金、給与、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの』
とされています。
つまり、労働の対価として労働者に支払われる給与を表します。
賃金支払いの5原則の、具体的な内容は以下のとおりです。
●(1)について
通貨払いの原則とは、賃金は通貨で支払わなければならないというものです。
つまり、賃金を手形や小切手など通貨ではないもので支払うことはできません。
ただし、例外があり労働協定や社員の同意がある場合は、通勤定期券の現物支給などが認められます。
●(2)について
直接払いの原則とは、賃金は労働者本人に支払われなければならないとするものです。
例外として、労働者の妻子であれば認められています。
●(3)について
直接払いの原則とは、賃金は全額支払われなければならず勝手に控除を行ってはならないとするものです。
例外として、所得税など法律で定められたもの、労使協定を結んでいる社宅費用などは控除が認められています。
●(4)について
毎月払いの原則とは、賃金を毎月1回以上支払わなければならないとするものです。
毎月1回以上の支給が設けられているのは、給与支給日が毎月バラバラだと労働者の生活スケジュールが成り立たないためです。
●(5)について
一定期日払いの原則とは、賃金は毎月一定の期日に支払わなければならず、会社の都合で支給日を変えてはいけないとするものです。
この原則も、労働者の生活スケジュールを守るために必要なものです。
以上、賃金払いの5原則ですが、見てみるとどの項目も労働者の生活のために必要な内容ばかりです。
つまり、労働者を保護するためにこういった原則が設けられているのです。
総支給額の計算のときに、特に質問が多い項目が「通勤手当」についてです。
ここでは、通勤手当の取り扱いを、詳しく紹介したいと思います。
通勤手当とは、役員や従業員の通勤を補助するために、通常の給与に加算して支給される手当のことをいいます。
そして、この通勤手当は、所得税が一定の限度額までかからない非課税所得という扱い。
法人役員にも通勤手当を支給することはできますが、従業員さんと同じ基準に基づいて支給をされたものが対象です。
通勤手当の取り扱いには、以下のとおり2種類あります。
●(1)について
公共交通機関を利用している場合の通勤手当は、「最も経済的かつ合理的な経路及び方法」で通勤した場合の通勤定期券などの金額です。
つまり、通勤に際し従業員さんが支払う実費精算分が通勤手当の金額となります。
さらに、1ヵ月あたりの非課税通勤手当の上限が150,000円となっていますので、この上限を超える金額は非課税所得とならず、所得税が課税されます。
●(2)について
マイカーを利用して通勤している場合は、片道の通勤距離に応じて1ヵ月あたりの非課税通勤手当の上限が決まっています。
公共交通機関で通勤をする場合と同様、この上限を超える金額には所得税が課税されます。
通勤手当支給時のポイントは通勤手当は、「最も経済的かつ合理的な経路及び方法」で通勤をすることを前提としています。
「最も経済的かつ合理的な経路及び方法」とは、回り道などをせず、通勤のための運賃や時間、距離等の事情に照らして考えるものとされています。
特におかしな回り道や、無駄な交通機関の利用がなければ合理的であるといえるでしょう。
実務では、グーグルマップのサービスを使って、事業所から従業員さんの自宅までの距離を算出して、通勤手当を支給したりします。
グーグルマップは、事業所から従業員さんの自宅までの経路が複数出てきて比較ができるため、通勤手当を調べる際には使用をおススメします。
【下記:国税庁ホームページより引用】
片道の通勤距離 | 1ヵ月あたりの限度額 |
---|---|
2キロメートル未満 | 0円 |
2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4,200円 |
10キロメートル以上15キロメートル未満 | 7,100円 |
15キロメートル以上25キロメートル未満 | 12,900円 |
25キロメートル以上35キロメートル未満 | 18,700円 |
35キロメートル以上45キロメートル未満 | 24,400円 |
45キロメートル以上55キロメートル未満 | 28,000円 |
55キロメートル以上 | 31,600円 |
従業員さんが休みをとったけど、すでに有給がない・・。
欠勤扱いになるけど、そもそもどうやって計算すればいいの?
といった場合の、欠勤時の給与計算を紹介していきます。
従業員への給与は労働の対価として支払われるものなので、欠勤などで働いていないときは、その分の給与を支払う必要はありません。
そして、労働基準法には、この欠勤時の給与計算について定めがありません。
よって、まず就業規則に定めがある場合は、その計算方法を用いて計算を行います。
そうでない場合、一般的には以下のような方法で給与計算を行います。
この二つの方法を用いて、不公平が生じた場合には有利なほうを選択しなければなりません。
例えば、次のような場合です。
(例)1ヵ月の平均所定労働日数25日(就業規則に定めあり)の事業所で働く給与250,000円の看護師さん。
労働日数20日の月に1日欠勤をしました。
まず、1日あたりの単価を計算します。
●(1)の方法で計算します。
●(2)の方法で計算します。
それぞれの方法を比較すると、2番目の計算結果が、1番目の計算結果より多くなりました。
よって、このケースでは2番目の方法を採用して、給与計算を行います。
いかがでしたでしょうか。
今回は第2回目で紹介した総支給額の計算の「補足事項」についてご紹介しました。
総支給額の計算をするうえで、今回紹介したことを知っておけばより給与計算を理解できるはずです。
皆さまの医院経営にこのコラムをぜひ役立ててください。
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