医療機関の給与計算(事前準備)

医療機関の給与計算(事前準備)

医療機関を運営するうえで避けられない仕事が『給与計算』です。

給与計算の仕組みは、複雑でミスをすると従業員の不信感につながってしまいます。

給与計算をする際は、最低限の知識を持っておくことが必要です。

そこで、今回から医療機関の給与計算を、複数回に分けて解説していきます。

まず、第1回目は、給与計算の全体像と事前準備についてご紹介していきます。

毎月の一大イベント 給与計算

給与計算の流れと、準備をする書類をおさえましょう!

給与計算とはなに

給与計算とは、その名のとおり従業員の給与を計算する業務です。

計算方法は、以下のとおりです。

  • (1)会社の就業規則や給与規定等に基づいて、従業員の勤怠や手当などを計算
  • (2)総支給額を算出
  • (3)総支給額から社会保険料や税金といった控除項目を差し引く

このような流れで、最終的な手取額を計算していきます。

最後に、給与支給日に従業員へ給与を支払って、1ヵ月の給与計算終了です。

クリニックであれば、給与計算は外部業者へ外注することなく、医院の先生や先生の奥様が行ってることが一般的でしょう。

毎日の忙しさのなかで給与計算を行うので、給与計算ではミスが起こる可能性があります。

給与でミスがあると、従業員の事業所に対する不信感につながってしまいますので、注意が必要です。

最近では給与計算ソフトが発達して、簡単に給与計算ができるようになりました。

しかし、給与計算を最後まで機械に任せるのではなく、最終的なチェックは事業主が行うことをおススメします。

給与計算の流れ

給与計算の流れは以下のとおりです。

  • (1)人事関係資料の準備
  • (2)従業員の勤怠を集計する
  • (3)給与の総支給額を算出する
  • (4)給与から控除する項目を計算する
  • (5)総支給額から控除項目を差し引いて手取り額を算出する
  • (6)銀行で給与支払手続きをする(現金払いまたは口座への振込)

(1)について

まず初めに、給与計算で使用する人事関係書類をそろえます。

そして、その人事関係資料をもとに従業員に異動事項がないか確認します。

例えば、給与計算を行う月に、入社や退社、昇給が起こっていれば今回の給与計算から反映をします。

(2)について

次に、給与計算期間における勤怠状況を集計します。

何日出勤していて、何時間勤務して、何時間残業、振替休日や代休はあるかといった確認です。

(3)について

その後、勤怠状況をもとに総支給額を算出します。

総支給額とは、基本給に手当や残業代を含めた総トータルの金額のことをいいます。

(4)と(5)、(6)について

そこから、社会保険料や源泉所得税、住民税といった控除項目を差し引きます

ここまでの計算で出てきたものが、従業員の手取り額で、

この金額を毎月の給与支払日に従業員に支払います。

給与計算とは、突き詰めればこの手取り額』を求める事務のことです。

最後に、支払うべき手取り額をもとに、給与の支払いを銀行で手続きをして終了です。

手順1 人事関係資料の準備

給与計算の手順の1つめ、『人事関係資料の準備』についてご紹介していきます。

実際に給与計算を行う際は、下記の書類を準備しておきましょう

そして、これらの書類は一冊のファイルにまとめて保管をしておくことをおススメいたします。

  • (1)出勤簿、タイムカード
  • (2)賃金台帳
  • (3)就業規則
  • (4)給与規定
  • (5)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • (6)給与所得の源泉徴収税額表
  • (7)健康保険・厚生年金保険の保険料額表

(1)について

まず、出勤簿またはタイムカードです。給与計算を行う期間における、従業員の勤怠状況や労働時間、有休取得を把握するために使用します。

(2)について

賃金台帳は、労働基準法108条に

「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調整し、・・(中略)・・賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない」

と規定されています。

具体的には、以下の事項を記入した台帳のことを表します。

  • 氏名
  • 性別
  • 賃金計算期間
  • 労働日数
  • 労働時間
  • 残業時間
  • 休日労働時間
  • 深夜労働時間
  • 基本給、手当その他の賃金(種類ごとに記載)

(3)について

就業規則とは、事業所のルールブックです。

労働基準法89条には

「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、・・(中略)・・就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」

と規定されていて、従業員数が10人以上であれば、作成が求められます。

(4)について

給与規定は、事業所にある規定のうち、給与関係に関する事項のみが集められたものです。

一般的には給与に関する事項は、就業規則に含まれていて、個別に作成していない事業所も多くありますので、個別に作成している事業所は準備しておくとよいでしょう。

(5)について

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、毎年11月くらいに最寄りの税務署から送付される書類。

所得税の計算を行うために必要な書類で、実務上、年末調整の際に従業員に書いてもらう事業所が多いでしょう。

しかし本来は、年末調整時ではなく、「その年の最初に給与の支払を受ける日の前日」までに提出しなければなりません。

従業員は、この申告書に扶養をしている家族の情報を書いて、提出をします。

(6)について

給与所得の源泉徴収税額表は、給与から天引きをする源泉所得税の計算をするときに使用します。

税額表は、毎年改正が行われているため、税務署から送られてくる最新年分のものを使用しましょう。

(7)について

健康保険・厚生年金保険の保険料額表は、給与から天引きをする健康保険料、厚生年金保険料の計算をするときに使用します。

これらは、従業員と会社の折半なので、給与から天引きする金額は、保険料額表にある『折半額』を使用しましょう。

この保険料率表は、下記にある年金事務所のホームページから取得できます。

【参考:平成314月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(福岡県)】

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h31/ippan4gatsu_2/h31040240fukuoka.pdf

いかがでしたでしょうか。

今回は、給与計算の全体像と事前準備についてご紹介しました。

先生方の医院経営にこのコラムをぜひ役立ててください。

 

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