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医療機関ならでは特別な税制とかないの?・・あります!
医療経営を行ううえで、おさえておいていただきたい税制に『医師優遇税制』というものがあります。
優遇税制ということで、国会でもたびたび問題になり色々な紆余曲折があり、対象となる事業者などの要件は縮小されました。
しかし、開業したばかりの医院などにはとても大事な税制です。
今回はその『医師優遇税制』についてご紹介をさせていただきます。
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開業当初や医療法人へ移行した年は
医師優遇税制の適用を検討してみましょう!
医師優遇税制の正式名称は『社会保険診療報酬の所得計算の特例』といいます。
租税特別措置法という特別な法律の26条に定められているため『措置法26条』という呼ばれ方もします。
この税制ができたのは昭和29年で、当時は措置法7条の10でした。
その当時の内容は、所得の計算をするときに、社会保険診療にかかる収入の72%を経費にするという破格の税制でした。
例えば、1,000万円の社会保険診療収入がある医院であれば、収入の72%にあたる7,200,000円を経費として計上してよかったのです。
さらに、ここまでの収入であれば適用するといった収入の上限もなかったため、非常に簡単な計算で、ものすごいメリットを受けることができました。
その後、医師優遇税制は不公平税制の代表格のような扱いを受けるようになります。
その結果、医師優遇税制は収入に応じて控除率が区分されることになり、収入にも上限が設けられることとなりました。
内容は縮小傾向ですが、現在まで完全に撤廃されることはなく、今でも医療機関であれば、個人事業、医療法人ともに適用することができます。
不公平税制の代表ともいわれていた税制はどのようなものなのでしょうか。
医師優遇税制の内容は、社会保険診療報酬の金額から経費を概算で計算して税金計算を行おうとするものです。
つまり、実際には経費を1円も使っていなくても、社会保険診療報酬の収入金額だけで経費の計算を行います。
しかし、あくまで対象となるのは社会保険診療報酬の金額となるため、自由診療の収入は実額で計算がされることとなります。
具体的な算式と控除率は、以下のとおりです。
算式:社会保険診療報酬の金額-(社会保険診療報酬の金額×控除率)
社会保険診療報酬の金額 | 控除率 |
---|---|
2,500万円以下 | 72% |
2,500万円超から3,000万円以下 | 70% |
3,000万円超から4,000万円以下 | 62% |
4,000万円超から5,000万円以下 | 57% |
医師優遇税制には、重要なポイントは2点あります。
1つめは適用を行うためには一定の収入以下であることが条件です。
つまり、収入が一定のレベルまで企業成長をした医療機関では利用することができません。
2つめは計算に特徴があり、社会保険診療報酬の額に応じて、段階的に控除率が定められています。
具体的な計算では、2,500万円以下の部分には72%、2,500万円超から3,000万円以下の部分には70%というように、段階的に控除率が適用されます。
例えば、社会保険診療報酬の額が5,000万円の場合、5,000万円すべてに57%の控除率が適用されるわけではありません。
一年間の社会保険診療報酬の金額が5,000万円の場合には、必要経費の金額は以下の計算式をすべて足した金額で、33,400,000円となります。
つまり、5,000万円に対する所得(利益)は、16,600,000円となります。
このとき、医療経営上は、現金が出ないにもかかわらず経費を計上できるため、資金繰りの面で大きなメリットになります。
医師優遇税制は、収入について上限があるので、ある一定のレベルまで企業成長をした医療機関では利用することができません。
なので、利用をするタイミングは、開業当初の医院や医療法人への移行を行った年が多くなります。
開業当初は、売上が立ち上がるまである程度時間がかかりますので、経費をできるだけ使わず手元にお金を残します。
そして、税金の計算では医師優遇税制を利用するという方法です。
医療法人を設立するときは事業を行う1年間が、個人事業で事業を行う期間と医療法人で事業を行う期間に分かれます。
例えば、年間9,000万円のクリニックで、7月に医療法人を設立して事業を開始する場合を考えます。
このような場合には、個人事業と医療法人の両方で医師優遇税制を適用することができます。
また、医師優遇税制を適用するか、通常の税額計算を適用するかは税務署などに事前に申請する必要はありません。
確定申告時や決算時に選ぶことができますので、有利な税制を選ぶようにしましょう。
いかがでしたでしょうか。
今回は医療機関ならではの税制である医師優遇税制についてご紹介しました。
医師優遇税制が利用できそうなタイミングでは検討することをおススメいたします。
皆様の医院経営にこのコラムをぜひ役立ててください。
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